口も筋トレが必要?!口腔周囲筋の筋力不足とその影響

お口は頬や唇、舌などのたくさんの筋肉で囲まれています。

これら口腔周囲筋が上手く機能しなかったり、筋力が衰えたりするとどうなるでしょうか?


歯並びと筋力の関係

「私って出っ歯だな…」「前歯がガタガタ乱れていて磨きにくい…」

そんな悩みを長年抱えている方は多いと思います。

では、なぜその歯並びになったのかを考えたことはありますか?

実はその歯並びには理由があります。

もちろん遺伝的な要因もありますが、それは30%程度と言われています。

歯列は、口輪筋と頬筋によって内側へと圧力がかかっています。

一方、舌は反対側から拮抗する形で外側へ圧力を加えます。

・口唇と頬による内側への圧力

・舌による外側への圧力

このようにして歯列は、両方向から圧力を受けることによって、安定が保たれています。


そしてこの圧力が不足したり、本来かかるところではない部位に圧がかかったりすると顎の正しい成長が阻害されたり、歯並びの乱れへと繋がっていきます。


このような歯並びと筋力の関係を専門用語で「バクシネーターメカニズム」と呼びます。


口腔周囲筋の筋力低下による悪影響

①歯並びへの影響

前述した通り、歯並びに大きな影響を与えます。

舌の筋力が低下すると舌の位置が下がり、本来触れていないはずの前歯の裏を押します。さらに口唇の筋力が低下していれば、外からの抑える力が不足します。これにより歯はどんどん前へ押し出され、出っ歯や受け口の原因になります。

また顎の成長が阻害されることでガタガタと乱れた歯並び(叢生)になります。

②口呼吸による弊害

舌や口唇の筋力が低下していると唇を閉じることが出来ず、いわゆる「お口ポカン」の状態になります。あくまでも口は「食べる」「話す」ための器官なので、正しい呼吸は「鼻呼吸」です。

口呼吸を続けていると、

・口腔乾燥による、虫歯・歯周病リスクの増加、口臭

・いびき

・アレルギー疾患、細菌感染による上咽頭炎や感染性疾患

など、様々な弊害が生じます。

鼻は空気清浄機の役割を担っているので、全身の健康のためにも「鼻呼吸」が大切です。

③発音障害

私たちが発音する際、口唇や舌、下顎や上顎など口の中の様々な部分を使用しています。

「パ行」や「マ行」を発するには口唇閉鎖が必要になりますし、「タ行」「サ行」は舌の先を上顎につけて発音します。

とくに「サ行」は、舌先を上の前歯の裏側に近づけた狭い空間から出る摩擦音で、歯に接すると発せられないので、微妙な舌の調整能力が必要となります。

このように口唇や舌の筋力が不足すると上手く音を構築できないので、「舌足らず」になったり滑舌が悪くなったりと発音に障害が生じます。

④食事

唇の筋力が不足していると、食べこぼしてしまったり、クチャクチャと音を立ててしまいます。

⑤顔のたるみ

口元や頬の筋肉は意識しないとなかなか使われないため筋力が低下すると、頬がたるんできたり二重顎になったりと、フェイスラインに影響が出ます。


はじめてみよう♪お口の筋トレ

健康のために運動や筋トレをしている人は多いと思いますが、お口の筋トレをしている人は少ないのではないでしょうか?

前述した通り、口腔周囲の筋力低下はお口のみならず全身的にも悪影響が出ます。

ぜひこの機会にお口の筋トレも始めてみませんか?


口腔筋機能療法(MFT:Oral Myofunctional Therapy)とは?

後天的な筋肉の不調和を舌や口唇、頬などの口腔顔面筋のトレーニングをとおして整えていく療法です。咀嚼時、嚥下時、発音時、安静時の舌や唇の位置の改善、および呼吸をはじめとした口腔機能の改善効果が期待できます。

(日本口腔筋機能療法学会より)


当院で矯正治療を行っている患者様は、必要に応じてMFTを行います。

MFTを行うことで正しい口腔周囲筋の使い方を身につけていただき、矯正後の後戻りを防止します。

また小児矯正用マウスピース「プレオルソ」は、お子様の顎を正しく成長させることと同時にMFTが行える装置です。

矯正、MFTに興味のある患者様はぜひ担当歯科衛生士、歯科医師までご相談ください♪


80歳で20本の歯を正しく残して、なんでも食べられる生活を

歯を失うのは、加齢変化ではなく、歯科疾患が原因です。日本は歯を大切にする文化が根付いているとは言い難く、知らない間に歯科疾患が進行し、抜歯に至っているケースが非常に多いため、それを加齢にすり替えて誤解されているのが問題だと感じています。歯を大切にする文化が根付いている国は、8020達成率が非常に高く、同時に生活の質(QOL)も高いといえます。日本の患者様に気づいていただきたい内容を記していきます。